366の真実

第2章【VEIN】より

【孤独】
☆小雨の降る日、僕の家はしんと静まり返った。
誰もいない一人ぼっちの部屋に振り子時計の音だけが鳴りひびいていた。
何でこんなに一人ぼっちなんだろう。それが僕の最初のため息。
(月刊カドカワ2月号)

☆真夜中に祈り続けたこともあった。
それから何度か死んでしまおうかと思った。
そして護身用に買ったナイフを手首にあててみた。
その時思い返してみたんだ。僕に拳銃を突きつけたゲイの連中は
寂しさに打ちひしがれていたんだろう。
薬の売人はせっぱつまった生活に追い立てられる孤独に苛まれていたのだろう。
何もかも、誰も皆、孤独の中にいる。(月刊カドカワ12月号)

☆抱きしめて温もりを感じた時に、
それが自分の温もりじゃなくて、相手の温もりであるってことを感じて
やっぱり別の個体なんだっていうことを認識する(ソニーマガジンズ)

☆打ち寄せては消える波の様な音が何処からか聞こえてくる。
僕は生み落とされ、すぐに歩かされ、喋らされ、
そしてありとあらゆるモノを叩き込まれた。
それは絶望の淵に追い込まれるもので
そこで僕が見たものは僕の生まれた孤独だった。(エッジオブストリート)

☆思い出していたんだ。何も辛くはなかった日々を・・・。
ただ孤独と戯れていた。
ただ優しさに飢えていた。
君を初めて抱きしめたあの日が、全ての始まりだったのだと。
今の僕ならそう言うだろう・・・。(エッジオブストリート)

☆時の流れの中にいると君を見失ってしまう
光の眩しさを見つめていると君を見失ってしまう
あの時間を幸せにしたその言葉のひとつひとつが嘘のように変わってしまう
傷つきたくないから確かなものが何ひとつないからと
言葉や笑顔や涙を間違ってしまう
何故なんだろう・・・
哀しいほど見つめていると君は変わっていく
互いに見つめている輝きが時の中ですれ違ってゆく(エッジオブストリート)

【混沌・葛藤】
☆いつも、こんなふうに考えていた。
ぼくは、間違えるかもしれない。ぼくは、傷つくかもしれない。
ぼくは、うまくいかないかもしれない。
だったら何が、”それでもいいさ”なんて言えるんだろう。(1986/誰かのクラクション)

☆拳を握りしめ走っていた。拳は空振りしていた。
空振りする拳は体力を奪ってゆくだけだとも知っていた。
近寄ってくる者全てにその拳を向けていた。
だがその拳で打ちのめすことは出来なかった。
打ちのめすための正当な理由は、
生きてゆくための妥協だけにあってはいけない、
そう信じていたからだ。
そして背を向けるとかならず後ろから傷を負わされていた。(1991/普通の愛)

視界が狭まる。まるで君を見つめる時の僕のようだ。
危険だけが悪戯に僕を捕らえ、もてあそぶんだ。
なのに僕は諦めに辿り着くまであと少しという気がして
安らいだ気持ちになるのは何故なんだろう。疲れているんだ・・・。(1991/月刊カドカワ1月号)


☆レコードを発売するのに何のためらいもなかった。
僕のまわりで生きている人間たちにとってはこの言葉や
メッセージが必要なんだという気持ちで歌を作っていたと思うから
それを作り上げるのに何のためらいもなかった。
ただ、レコードが出てから、自分の純粋な気持ちを表現したという
満足感はあったけれども、聞き手と歌い手のギャップがあるという事に
気がついた。(1990/月刊カドカワ7月号)

☆作品を作るという意志にもとずいて仕事をしてはいるのだが、
何かが足りなかった。
僕は日本で何が流行ってるのかも何も分からなくなっていたし、興味もなかった。
それはある種ホームレス感覚からくるものだったのだろう。
英和の辞書を片手に日本語訳のないレコードを聴いていた。
まして僕には人の心が分からなくなっていた。(1990/月刊カドカワ12月号)


☆もしかしたらいけないんじゃないかと思う事まで受け止めて
勘違いされるに決まってることまで受け止めてやってきたことが
結局わかってもらえないことにつながった。
それが最終的に自分の何になったかというと、
結局自分の欲望の姿でしかありえなかった。(1990/月刊カドカワ12月号)

☆僕は現実と理想のはざまで、もしくは惰性から逃れるために、
今、心の葛藤を持ち始めているようだ。(1993/黄昏ゆく街で)


☆どうしても新しい価値観が欲しかった。
それはいつも何かが自分に足りないと思っていたからだし、
そしてそれがいつまでたっても変わらない呪縛の念になって
僕を苦しめ続けていたからだ。
何か新しい角度で物事を判断できるようになれば、
もっと社会や物事に折り合いがつくと思っていた。
正しい理想は必ず現実化される。そう信じていた。(1990/月刊カドカワ12月号)

☆どうすれば、人に希望や感動を与えることが
出来るのだろうかって考えることは、
もしかしたら、すごく傲慢な行為かもしれない・・・。(1985)


☆いつも涙を流すときこの涙がはたして希望の涙なのか、
なにかを後悔した涙なのかって自分に問いかけてみる。(1985/自由国民社)

☆大人達はね、僕に社会的な意味を見つけては納得しているんだ。
そういう人達は歌詞カードだけで
僕のことをわかったつもりになっている。(1985/ソニーマガジンズ)


☆誰の暮らしも、それぞれ自分一人で背負っている。
誰の横顔も決して他人の思い出を背負った暮らしに、強く頷くことは出来ない。
そんな淋しさに、いったいどんな言葉を
投げかけてあげるべきなのか。(1986/誰かのクラクション)

☆好き勝手に生きたかった。
そう思う反面、人に優しくされたかった。
死ぬまで生きるために働き、ひからびていく自分を思い浮かべ
吐き捨てるように笑った。(1986/誰かのクラクション)


☆訴えかけようとする自分自身と
実際にやってる自分の力の足りなさに嫌になっちゃうとこがある。
それが、今一番の僕の問題です。(1984)

☆寂しさや喜びを自由に操作出来るはずもないだろ。
悲しみに耐え、喜びを受け止め、感情の起伏を抑えながら
過ごさなければならない。
けれど時には手は汚く腐食したモノをも掴んでしまう。
手に目はない。
暖かさと冷たさを知るのみだけなんだ。
僕らが暖かさを求め過ぎると、
時折腐食したモノまで掴んでしまう。
それは暴力だ。そして悪だ。(1991/ソニーマガジンズ)


☆無力な僕は権力を憎む。
人の優しさを奪うもの全てを憎んでいる。
財力は差別を生み、僕を虐げる。
君と僕を遠く離ればなれにしたのも、
結局はその優しさの無い権力なのだろう。
権力という世界の中で人は皆弱くそして嘘つきだ。(1992/アイソトープ)

☆走りすぎてゆくバスに書かれた、You get the power.I love N.Y.
という言葉がとても気になった。
それから三日後日本に帰ることにした
大学ノート五冊分も書いた詩や走り書きの一番最後の言葉・・・。
昨夜眠れずに失望と戦った。
昨夜眠れずに欲望と戦った。
それと一緒にナイフの絵が書かれてあった。(1991/アイソトープ)


☆信頼してた人に裏切られた。
信頼してた別の人に「それは君が悪いんじゃないの」そう言われた。
じゃあ俺が騙されていればよかったのか。(1992/アイソトープ)

☆見つめているものは、幻想と休日の太陽と一瞬の季節。
ただそれだけのこと。
漂流し続ける時間の狭間には、様々な思いが生まれては消える。
けれど、それだけのこと。
見つめているものは多彩な精神の浄化(1991/アイソトープ)


【生きる意味・真実】
☆人は何のために涙を流すのだろう。
何のためにそんなに体を求め合い、
息も詰まるほど、抱きしめ合うのだろう。(1993/角川書店)

☆人は誰しも、自分の世界から
逃れることのできぬ苦しみを背負っている。(1993/角川書店)

☆いつだって幸せを抱きしめていたいものさ。
信じていたいさ。すべてを捧げるもの。
それが欲望。それが愛。
その相反する二面性を持ったものこそが真実なのだから。(1990/角川書店)


☆「ねぇ、こっちの方には無いんじゃないかな。
あるとしたら自分が歩いて来たところを戻ってみるしかないよ」
「だからこっちの方に来たんだ・・・」
「そう。でもこんなに暗くて、
こんなに人が多いんじゃ、きっと見つからないぜ」
「そうかなぁ・・・」
ボクニハ ミツカルキガ スルンダケド・・・。(1991/アイソトープ)

☆僕はまた一人きりの誕生日を迎えていたんだ。
けれど今が新たな出発の時だとするならば、これまで覚えてきたすべてを糧に
もう一度勇気をこめて生きてゆこうと思う。
生まれてくる全てのものよ、その意味がわかるだろうか・・・。(1990/角川書店)


☆ボクら人間が生きていくうえには、さまざまな壁がまちうけてる。
それを、どうやってのり越えて行くか。
なんどでもなんどでも葛藤を繰り返したのち、もし、それを克服できたら・・・
そのときこそが”卒業”と呼べるんじゃないかと。
卒業=克服。
それはまた新たに”生まれること”と言ってもいいかもしれない。(1995/集英社)

☆ある人に言われたんだ。
「まず走るんだ、走れ!」
その言葉はまるで祈れと言われているように聞こえた。
ーずたずたに引き裂かれた心が路上に転がっている。
拾ってみると昔捨てた夢のかけらだった。ー
六年経った今俺は歌う為に生きている。そう感じる。(1991/アイソトープ)


☆俺はすくなくとも自分自身の真実のために1日1日を生きていきたい。(1985/自由国民社)

☆俺の人生なんて何もない夜の国道沿いを歩くようなもの。
でもね、考えれば考えるほど思うんだよ。
俺にとってはそれが人生。
無表情な毎日が記念日。(1991/ソニーマガジンズ)


☆僕は『永遠の胸』という曲の中で”この身も心も捧げよう
それが愛それが欲望それが全てを司るものの真実なのだから”と歌った。
つまり「君のためになんでもしてあげるから」って言われたら
それはもうすべてを言い尽くしている。
ある意味では神様しか言えないような献身的な言葉に対して誠実に応えたいと思ったら
それが行き過ぎれば欲望に変わるし
そのはざまに揺れ動くものが真実だっていう。(1990/角川書店)

☆オレの求めてることが、ほんとうに人間の求めている、
何かであってくれたらいいな・・・でも、答えが出ちゃったら、
生きるのをやめてしまうかもしれない・・・(1984/雑誌名不明)


☆まだ若かった俺はステージを降りる間際にこう言っちまったんだ。
俺を信じるならば、ついて来るがいい・・・。
そこに答えがあると・・・。
答えは・・・、これからだ。(1991/パンフレット)

☆自分が正しいと思うものに裁かれる。
人が考える欲望の全てに祈るなら分かるだろう。
全ての人々にとって「生きる」ということだけが望まれていることだということが。
俺もまだ生きている。
生きている証にこの言葉を刻もう。
誰もが皆生きていることを証示しているのだから。(1991/ソニーマガジンズ)


☆「見つかったか」君がそう尋ねる。
「うぅん、まだ見つからないんだ」
僕はうつむきながらそう答えて、また歩き出す。
モウスコシダケ サガシテモイイダロ。
アトスコシ ジカンガ アルカラサ・・・。(1991/アイソトープ)

第1章へ